コラム
 
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■6月のコラム---2001

正常眼圧緑内障

最近よく寄せられる相談のメールに見かけられるのが「正常眼圧緑内障」です。近頃、テレビや雑誌などで徐々に取り上げられ始めたのでご存知の方も多いかと思います。しかし、この正常眼圧緑内障は少し定義から見ても難しい面があります。今月はこの正常眼圧緑内障について、わかりやすく説明してみました。コラムを読んでいて不明な点や、不安に思ったことなどがあれば、どうぞ気軽に「無料メール相談」をご利用ください。

●目次


1. 正常眼圧緑内障とは・・・

  目をカメラにたとえた場合、外から入った光は角膜などを通り、フィルムの働きをする網膜にピントが合う仕組みになっています。この網膜で受けた光は、電気の信号に変わり視神経を伝わって脳の視覚中枢に到達して、私たち人間はものを見て認識することができます。

  この順路のどこにトラブルが起こっても、ものを正常に見ることができません。緑内障はそのうちの視神経が、主に眼圧によって侵されてものが見えにくくなる病気です。

  今、「主に眼圧によって」と説明しましたが、実際には眼圧が正常か、やや高い値でも緑内障になるケースが増えています。このことを「正常眼圧緑内障」と呼び、最近テレビや雑誌などでも取り上げられるようになってきました。


2. 緑内障の発見

一口コラム(1)
緑内障と言えば、「眼圧が高くなり眼痛・吐き気を起こし・・・」と以前は医学書に書かれていましたが、自覚症状の無い、また眼圧が高くない緑内障が日本人には多いようです。そして、この緑内障こそが正常眼圧緑内障です。
  少し話を戻して緑内障のことについて、もう少し詳しく見ていきましょう。緑内障はものが見えにくくなる病気だ、と先ほど説明しましたが、具体的に言うと眼圧によって視神経が侵される結果、視神経が徐々に消失してしまい、その部分の情報が脳に伝わらなくなるために、視野が欠けてしまうのです。この変化は大変ゆっくりであるので、緑内障の初期症状を自覚するケースはほとんど無いと言っても良いでしょう。時には何十年も経ってから気づくという場合さえあります。


3. 緑内障を自覚しにくい理由

  気づくのが時には何十年も経つ程遅いのはなぜかというと、一つはヒトには(あるいは生物にはと言えるかもしれません)生体上重要な部分には対になっているということに話が結びつきます。どういうことかと言うと、生きていくのに大切な器官は対になって備わっている、ということです。例えば耳などがそうです。ヒトには右と左、両方に耳がついていますが、仮に片方が聞こえなくなったとしても、もう片方があるので聞くことはできます。そして片方の耳で両方の耳の役割を果たそうともします。

  目の場合も同じで、片方の目が見えにくくなった場合、もう片方の目がそれをカバーしようとするのです。ですから、緑内障によって片方の目の視野が仮に狭くなったとしても、もう片方の目でそれを補おうとするので、トータルで見るとそれほど見えにくいと感じることは無いのです。これが自覚するのが少ないという理由の一つだと言えると思います。反対に言えば、自覚した時は、すでにかなり進行しているということもできるのではないでしょうか。ここに緑内障の恐ろしさがあるのです。


4. 緑内障の検査

  ところで、緑内障であるかどうかはどのように検査されるのでしょう。緑内障は、眼圧が高いということが一つの判断する基準となりますので、眼圧測定をします。しかしこの他にも、視野検査、隅角検査など多くの検査を必要とします。

  では、ここで正常眼圧緑内障の場合を見てみましょう。正常眼圧緑内障は、眼圧が正常かもしくは少し高い値であるのに緑内障になるケースのことであると紹介しました。問題はここにあります。眼圧が高いということが判断の一つになるのに、眼圧が正常か少し高い値であっても緑内障になる正常眼圧緑内障の場合は眼圧検査では見分けることが通常の緑内障に比べ難しいということが言えます。ですから、眼圧検査の他にも、眼底検査や視野検査などを行い、総合的に緑内障であるかないかを調べるのです。


5. 正常眼圧緑内障の治療

  ここで正常眼圧緑内障の治療について少し見ていきたいと思います。ある研究によると、正常眼圧緑内障を長い間、何も治療をすることなく放っておいた場合、半数以上の確率で視野に何らかの障害が起こり、悪化するというデータが出ています。よって、なんらかの処置をする重要性を示すものであり、またこれは治療の重要性も示しているといえるでしょう。

一口コラム(1)
 残念ながら緑内障は完治ができない病気だと言われています。これは、一度損なわれた視神経は回復することができないことから判ります。しかし、点眼やレーザー治療等により、それ以上進行させないようにすることの治療は行うことができます。これが緑内障の治療なのです。
  現在、主な治療方法は点眼などの薬物による治療と、レーザー治療や手術治療で対処がなされています。最新の治療現場では、正常眼圧緑内障に関しても、眼圧を持続的に十分に下降させることが重要であること、そしてこれが視野障害の進行を抑制できる可能性があると言われています。「可能性がある」ということは、眼圧を下降することだけが視野障害の進行を抑制することにはならないということを、知っておく必要があります。これは、ある研究のデータからも分析することができます。しかし、眼圧を下降させることは視野障害の進行を抑制はしても、飛躍的に悪化させるものではないので、やはり眼圧の下降を重視した治療をする必要があると言えるでしょう。この意味で、点眼などの薬物治療にしろ、レーザーや手術による治療にしろ、眼圧を下降させることを目的としています。


6. 最後に・・・

  目の病気に対しては、いつも言うことですが早期発見が何よりも大切です。緑内障の場合は特にそうだと言えます。自覚するケースが少ないと言われているように、なかなか自分では気づきにくい病気だと言えます。この点で、定期的な検診がいかに重要かがおわかりいただけると思います。手遅れにならないように・・・この言葉もいつも言っていますが、私がみなさんに伝えたいメッセージです。
 
 
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